タオパオ等で副業する駐在員妻や留学生を狙った特殊詐欺

●情報

 

タオパオやWechat商店などで副業をしている駐在員妻や留学生を狙った、特殊詐欺被害の報告があった。

概要はこうだ。

タオパオやWechat商店を使って日本の商品を売るという、いわゆる「日本代購」を行っている方を狙った詐欺なのだが、その多くは中国人が日本の化粧品等を売っているのがほとんどだ。

しかし最近はショップ運営の手軽さから、駐在員妻や留学生が日本に一時帰国の際に、大量に商品を仕入れて、もしくは日本にいる家族や友人に頼んで商品を発送してもらい、日本代購をやっている方を見かける。今回はこの日本代購の違法性は置いておくとして、これらをやっている方を狙った特殊詐欺が発生している。

 

今回報告のあった犯人は日本人で、まずタオパオ等で対象を探して商品を普通に購入する。ショップ側も商品を発送して普通に取引が成立する。特にクレームなどは一切無い。商品代金も普通に支払われる。

そしてWechat商店の場合はそのままWechatで、タオパオの場合は専用連絡メールや専用チャットを使って声をかけてくる。内容は「他にどんな商品があるか」や「○○商品が欲しい」などである。そして「日本に帰国しないから、今後も買います」等と声をかけてくる。

さらにタオパオの場合だと「今後連絡しやすいようにWechatを教えてくれ」と要求し、ショップ側も相手が日本人と言うこともありWechatを教えてしまう。

ある日の金曜日、この日本人から連絡が来て「中国人の友人が事故にあって大怪我をした。急遽お金が必要なんだけど、実は私は今日本に居るので、友人を助ける事ができず困っている。日本で日本円を貴方の口座に入金するから、中国人の友人の口座に人民元を振込んで欲しい。日本で50万円入金するから22000元を入金して欲しい」と言ってきたのだ。

ショップを運営している駐在員妻は相手が日本人だし、日本で日本円が入るのは日本代購をやる上で非常に助かるという事もあり、この日本人の依頼を受けてしまったのだ。

この日は金曜日の午後であるのも一つのキーポイントなのだ。

夕方になるとこの日本人から連絡が来る。「今50万円入金しました。15時を過ぎたので着金は月曜になります。ただ中国の友人は今すぐお金が必要なので何とかして欲しい。入金した証拠として日本のATMの振込み伝票を写真にとって送りますから、それで入金していただけないでしょうか」と言ってきた。そして程なくして50万円の入金の記録の書かれた振込み伝票の写真が届いたのだ。

ショップを運営する駐在員妻はその伝票を見て、日本人に「わかりました」と言って、日本人の指定する中国人の口座に22000元を振込んだのだ。そして30分ほどで日本人から「中国から連絡があり、確認できたとのことです」と連絡が来たのだ。

中国の銀行は個人の取引は年中無休で時間も関係なく手続きができ、お金が動くのだ。

月曜日、ショップ運営の駐在員妻は日本のネットバンキングでお金の確認をすると、入金の記録が無い事に気がつく。慌てて日本人に連絡すると「たぶん月曜日だから銀行が込んでると思う。15時まで入金が無かったら再度連絡下さい」と言われた。

日本時間で15時に再度確認するが、やはり入金されていない。慌てて日本人に連絡するもWechatは削除されており、連絡手段を失ってしまったのだ。またタオパオで購入した商品に関してもシステム上では取引が完了しているが、調べると実際の商品は宅配業者で「不在」と言うことで止まっていたのであった。タオパオで商品を購入した際の連絡先は全て嘘だったのだ。

 

こうして日本人詐欺師に22000元(日本円で約45万円)を騙し取られたのだ。

中国の銀行の仕組み、宅配業者の中途半端な仕事、簡単に作れるWechat ID、日本の銀行の営業時間をうまく利用した物であった。

そして駐在員妻は家族帯同ビザということもあって、中国で商売を行っている場合は不法就労になるので、中国警察にも相談できず、STCCに相談に来たのであった。

 

正直、本件に関してはどうする事もできない。

まず、当然であるが中国の銀行口座は架空口座である。中国では自分の口座をお金目的で売る人も多いので架空口座は簡単に手に入る。

そして気になるのが日本の振込み伝票である。弊社で解析すると伝票の紙自体は本物であるが、伝票上に記載されている文字は加工された形跡を発見した。

つまり日本のATMのゴミ箱から捨てられた伝票を拾ってきて、パソコン上で加工していたのだ。

 

そこで友人の公安関係者に相談すると以下のような回答が来た。

「派出所に届けるべきだが、受理はするが逮捕や返金は無理だろう。詐欺の証拠である伝票の現物、もしくは加工したPCや加工前の伝票が無ければ立件できない。また証拠がないため口座も凍結できない。証拠がない以上何もできない。またこのような両替行為も違法だし、そもそも駐在員妻がタオパオとはいえ商売をやっている事も問題になる。22000元はけして小さな額ではないが、諦めたほうが駐在員妻のためになるかも。」との事だ。

 

一方日本の警察の生活安全課の回答は以下のとおりだ。

「お金を取られた場所が中国なので、日本の警察としては何もできない。中国で逮捕状が出て日本の警察に捜査協力要請が来ればこちらも捜査するが、実際は全て中国内で起こっている事なので、どうする事もできない」との事だ。

 

タオパオやWechat商店などで日本代購をやっている方は、相手が日本人であっても、通常の売買取引以外では連絡を取ることないよう心がけると共に、どこにでも詐欺師の目があるということを認識していただきたく思う。