居留許可取得地以外での勤務による行政処分が急増

●トラブル事例

 

広州で就業目的の居留許可を取得したAさん。顧問契約先の営業の手伝いで上海に月の半分出張していました。上海の契約先企業も営業の手伝いのため、便宜上、上海の会社の名刺を発行していました。

 

ある日、上海の取引先企業の日本人社員がトラブルに巻き込まれ、通訳もかねて派出所に行った際、警官に「あなたは誰ですか」と聞かれたため、上海の名刺を出し、事情を説明。

警官にパスポートも提示するよう言われパスポートを提示。

するとしばらく待つように言われ、待っていると、出入境の外事警官が現れ、「あなたはなぜ広州発行の居留許可で上海の企業の名刺を持っているのか。これは不法就労になる。あす出入協管理局に出頭しなさい」と命令されました。

 

翌日、上海の企業の代表と広州の日本人は出入境に出頭。

上海企業側も顧問契約書、営業許可証、広州から送られてきた営業許可証のコピーも持参し事情を説明。

しかし出入境は「問題は上海の名刺を持っていること。これは上海の企業にて就業している証拠」と説明を受け入れてもらえず、結果として

 

広州の日本人には行政処分で罰金5000元、上海企業側は行政処分で罰金10000元が言い渡されました。

 

●見解

 

現在、中国の出入境の見解によると、就業目的の居留許可は申請したときの企業でのみ就業が許されており、いかなる理由であっても、申請時の企業以外での就業は認めないとのこと。

またこれは分公司でも同じで、たとえば上海に本社があり、蘇州分公司で勤務しても、蘇州で再度就業申請を行わなければいけないとのこと。他社の名刺を持っていること自体が不法就労扱いされるとのことでした。

 

我々の考えでは中国で就業許可と居留許可があり、支社や取引先の手伝いは感覚的に不法就労でなく、取引先の利益等を考えれば、名刺くらいはたいした問題ではないと感じやすいですが、昨今の中国では日本人に対する風当たりも厳しく、出入境に関する法令改正もあり、非常に厳しくなっております。

 

中国には我々が理屈でこれは違法でないと感じることも、その油断を突いて違法扱いされる可能性もあります。

 

上記例では出入境の話では「これでも罰金額も一番安い。軽くしてあげてる。本当なら居留許可取り消し、企業も一定期間営業停止になってもおかしくない」と言っておりました。

またこのような形での不法就労の取締りを強化しており、上記例ではたまたま名刺を出したがために発覚してしまいましたが、最近では企業に訪問しパスポートの確認をやっているようです。そのためかなり多くの日本人が不法就労で摘発されているそうです。

 

また退職後の居留許可返還がなされず、中国に滞在していて、就職活動中に不法滞在とみなされ強制送還になっている日本人もかなり多く居ます。

 

取引先、出張先であっても、就業許可を取得した会社以外の名刺は作ることのないよう、気をつけてください。

また警官に身分を聞かれた場合も、就業許可を取っている会社の名刺だけを提示するようにしてください。

 

現状、出入境の見解が上記のようになっており、これについてどんな言い分も受け入れてもらえないのが現状です。

 

また行政処分を受けますと、企業名、個人名はすぐに公安のネットワークに登録されてしまいます。

これらは今後の業務や駐在員のビザ申請等に大きく影響しますので、十分注意してください。