中国での金貸借の注意点。少しのミスで回収不可能

中国で貸した金が返って来ない。回収に非常に苦労する。ということは皆さんご存知であると思う。

当然、KTV小姐等に「家族が病気で…」なんて言われて、小姐の本名も住所もわからない状況で、下心から金を貸し、「借用書を作る」と言うと「私を信用してないの!」なんてキレられて貸すお金は、これは債権ではないので、ここでは関係ない。

 

中国では「貸した金はあげた物と思え」という言葉があるように、回収は非常に困難なのである。

その理由の一つに不動産を担保にしても、社会主義国家の中国には「住む権利」があるため、不動産が取れないというものがある。

他にも借方が色々な理由で逃げたり、返済を先延ばしにしてあきらめるのを待ったりと、借方の問題も多くある。

 

結果としてほとんどが裁判になるのだが、では貴方が貸し付けたお金の回収に関して、法的対処ができるのか。

STCCに相談にくる債権問題で、借用書を見るとほとんどが法的効力を持たないものになっており、裁判すらできない状況です。

そこでお金を貸す際の注意点をまとめましたので、参考にしてください。

 

1、借款用途の確認

貸したお金を借方が何に使うかを把握しなければいけません。もし借方が賭博、麻薬、買春、武器購入など違法行為に使用する場合、お金を貸しても法的保護は受けられません。

 

2、双方の身分確認

借用書には必ず双方の住所、電話番号を書かなければいけません。ここまでは皆さん普通に書くのですが、よく忘れがちなのが、双方の身分証番号です。身分証番号の無い借用書は無効になります。

 

3、貸付金額を明確にする

借用書には元本と利息を書きますが、裁判では元本(実際の貸付金額)が認定されます。そのため貸し付けの際は借用書のほかに出金伝票や受領書などを準備しましょう。

 

4、空白欄のある借用証は無効

借用書内の条項に空白欄があると借用書は無効となります。

 

5、金額の記述は必ず大写、小数点以下も記す

借用書や受領書などに金額を記す場合、数字だけではなく必ず大写も書きましょう。2通発行借用書の数字が違うと無効になる場合があります。大写は必須です。また中国での金額表記は小数点以下第二位までです。この点も注意しましょう。

例)\35,000.00-(人民币叁万伍仟元整)

 

6、利息に関して

まず利息が年利率なのか月利率なのかを明確に記し、月利率で毎月固定の利息を書く場合は必ず大写も記しましょう。

また中国の個人間の借款に関する法定利率は毎年中国人民銀行が発表する年利率の4倍までとなっています。最近ですと利息上限は24%となります。

これを超える利息を設定した場合、裁判では24%までしか認められず、超過分は返金することとなります。

 

7、日付をきちんと書く

借用書に契約日、貸付日、返済日などの日付が記されていない場合は無効となります。

 

8、借用書作成に使うペンに注意

中国では契約書や借用書を書く場合は必ず中性ボールペン(黒)、もしくは黒インクの万年筆となっております。それ以外のペンでの証書は無効となります。

また印刷の場合は黒のレーザープリンタで作成し、署名は上記のペンで書くことになります。

それ以外は無効です。

 

9、使用する文字に注意

中国語に不慣れですと字の間違い、または同じ字で別の意味にとられる場合があり、相手に付け入る隙を与えてしまいます。

例)[买]と[卖]、[收]と[付]、[借给]と[借]、[还huan]と[还hai]等

 

10、保証人問題

無担保でお金を貸す際に、心配になって保証人などをつける場合があります。当然借用書内に保証人のサイン、身分証番号、住所連絡先などを書くのは当然なのですが、実際の裁判で連帯保証人に責任追及することはほとんどありません。これはほとんどの裁判で保証人が「私は知らない。騙された。サインしたときは白紙だった」などという場合が多いのも原因です。また借用書に書く場合の保証人の意味ですが、中国だと一般的に三種類あります「保証人」「立見人」「担保人」です。

この中で日本でいう連帯保証人は「担保人」ですが、実際は担保人に返済責任を追及させてもらえません。

貸し出す際は保証人がいるからと安心せず、事前にきちんと借方の素性や返済能力を調べるようにしましょう。

 

 

企業であれば、顧問弁護士がこれらを踏まえた上で借用書を作成してくれると思いますが、個人間だと、どうしてもおろそかになってしまいます。

特に日本人から中国人、日本人同士の場合、日本語で書いたり、日本のルールで書いてしまい、中国で回収できなくなった方が多くいます。

最初に述べたように借用書すらない債権は債権ではありませんし、口約束は無効です。

 

KTVなどでは先に書いたように「親の病気」以外にも「日本に旅行に行くビザの保証金を貸してほしい。帰国して銀行から出せるようになったらすぐ返す」と言われて、日本人側も銀行に置いておくだけだからと、口約束で貸してしまったり、なんと最近では微信で約束してお金を貸すという愚行をする方までいます。

そして帰国後に「お金返して」と要求すると「生活費で使った」「親が病気で急遽使った」等言い訳をされて結果返ってこないと言うことが多く発生しています。

借款理由がどうであれ、口約束や微信での約束は無効です。これは貸した金ではなく、あげた金と判断されます。

 

お金の貸し借りに関しては自身を守るためにも正確な知識を身につけ、借用書は貸方が用意し、ルールに従って作成するようにしてください。

後になってお金が返ってこない、裁判ができないとなっても、ここ中国では誰も助けてくれません。

十分注意してください。

 

その他として、ごく稀に弁護士書簡を借方に送る際、中国にいる日本人弁護士に依頼し、日本人弁護士の文書と印鑑で書簡を送る方がいます。

中国においては外国人弁護士は弁護士業務を行うことができません。日本では弁護士であっても中国ではただの日本人であることを忘れないでください。

日本人弁護士が中国で弁護士として書簡を送りますと、無許可で弁護士を語った日本人の脅迫文書となってしまう場合があります。これらは全て無効です。必ず中国人弁護士が書簡を送るようにしてください。