賃貸不動産トラブル相談が急増。今後増える可能性があり注意が必要

●情報

昨年末より大家との保証金問題や強制退去などのトラブル相談が急増しています。

保証金未返還などは以前からも多くあるトラブルですが、昨年末より「大家から急に1か月後に出てくれ」と急に通知されたというものが増えております。

 

違約金も払うからと急に来月退去と言われても困るわけで、もう少し待ってほしい等の交渉しても平行線でという相談が多くなっております。中には口論になったり、強硬手段を取られたりというのもありました。

 

これらトラブル急増の背景には経済状態の変化があるように思います。

特に日本人駐在員の多くが居住している中高級マンションは大家が投資目的で購入している場合が多く、これが現在の経済状況の影響で、トラブル化していると考えられます。

 

ある不動産屋の知人の話しによると、不動産の売買はここ数カ月ほとんど契約が無いと言います。

逆に過重債務によって売却したい家主がいても、内見はあるが契約に至らないということが多いそうです。

また福建省出身の知人が経営する内装工事会社では昨年からもう3か月以上仕事が無いと言います。

これ労働節まで仕事が無いようなら上海から撤退するとまで言っています。

まるでかつての日本のバブル崩壊時のような現象です。

上海など大都市圏のホワイトカラーは当然日本のバブルとその崩壊を知っています。

つまり、中高級マンションを投資目的で購入していた大家が、これから不動産価格が下がると考え、今のうちに売り抜こうと考えているのです。

中国政府は「大丈夫」と言っていますが、そんなのを信じる人はいません。中国人は官制情報より、知人や親友からの情報を信じる傾向にあります。投資家達の間で不動産価格の下落を予測し、高値のうちに何とか売り抜きたいと考えてもおかしくありません。

 

先に記したように売りたい人がいても、例えば上海などでは現在の不動産価格は異常であり、一般の会社員では頭金すら用意できない状況です。また個人信用情報システムの開始により、万が一返済が滞りブラックリスト入りしてしまえば、航空券や高速鉄道のチケットが購入できないばかりでなく、将来の子供の教育、年金にも影響しかねません。つまり多少無理したローンを組むことに恐怖があり、購買意欲が低下しているのです。

 

そこで投資目的で購入した中高級マンションを売りたい投資家は、少しでも良い条件で売りたいと考えるのです。

投資目的の物件は賃貸に出し、大家は資金の回収の一部にしていました。そこで少しでも高く貸せて、なおかつ物件の損傷が少なく、綺麗に使用する日本人は最高の顧客でした。

結果として現在多くの駐在員が住んでる部屋は、市場価格の1.2倍から1.5倍であるにもかかわらず契約し、投資物件に住んでいるわけです。

そして現在、この投資物件を早く、しかも良い条件で売り抜きたい大家は、少しでも購入者への印象を良くするため、現在借りている人追い出し、クリーニングして内見してもらおうとしているわけです。

その為、昨年末から強制退去に関するトラブル相談が増えていると考えられます。

 

そして急に強制退去を言われた借主は慌てて反論。大家は違約金を出すと言っても、仕事を抱えながらの家さがしは1か月では短く、結果口論になってしまう状況になっているのです。当然言葉の壁もあり、揉めてしまう場合もあります。

 

しかし、正しい知識を持っていれば、容易に口論を避けることができます。

各都市によって若干違いはありますが、上海を例に挙げれば、上海には「上海市房屋租賃条例」があり、当然借主側の権利も記されております。

つまり、本来であれば家主が売却したいとなった場合、まずは借主に説明し、借主に優先的に購入する権利がありますが、駐在員で購入は考えないでしょう。借主が購入を拒否した場合、家主は購入者を探すようになります。

当然家主は購入希望者に「現在借りている人がいる」ことを伝え、契約期限も伝え同意を取ります。

そして売買契約が成立すると家主が変わるわけですが、借主は以前の家主との契約が自動的に継承されるため、家賃の振込先が変わるだけで済むわけです。当然契約が切れる際に引越しを求められる可能性もありますが、時間的余裕が持てるわけです。

しかし家主はこの状況が不動産の価値を下げ売却に影響を与えると考え、強制退去という強硬手段に出るわけです。

条例では借主の権利も保障されていますから、正しい知識を持って、冷静に反論し、それでも話が平行線になるようなら政府サービス電話12345に電話し、仲裁してくれる関係政府機関を紹介してもらい、そこに相談すればよいだけなのです。

 

本来は契約満了まで権利はあるのですが、口論するのではなく、正しい知識を持って反論すれば、大家も引かざる負えない状況になりますし、お互い妥協点も見つかるでしょう。

例えば「1か月では無理だけど3か月あれば新しい部屋を探せる。見つかったらすぐに退去しますし、部屋は清潔に保つ。事前に連絡をくれれば内見にも協力します。それに実際に生活している状況の方が、購入希望者もイメージしやすいでしょ」なんていう妥協点も見つかりかもしれません。

 

昨年末から強制退去のような相談が増えてきています。先に述べたように、今後は高値のうちに売り抜こうとする家主増えてくるでしょうから、投資目的の物件に居住している方は、今後は他人事ではなくなるかもしれません。

しかし正しい知識を持ち、冷静に正しい反論をすれば、ホワイトカラーの家主なら理解と妥協点を見つけることができるかもしれません。

当然自身の権利を主張することは大切ですが、一方的に自身の権利ばかりを主張しても口論になるだけです。

日本人が一番得意な妥協点の模索もまた一つの方法です。その為には正しい知識が必要になります。

自己防衛の一環としてもう一度契約書を読み直し、仲介業者とも連絡を密にして、突発的な強制退去通知にも対応できるようにしておきましょう。