バリ島の邦人女性強盗傷害を受け、中国でも安全について考えましょう

●情報

先日、インドネシアのバリ島で日本人女性が強盗に襲われ、重傷を負うという痛ましい事件が発生しました。

事件の状況、事件前の女性の行動から察すると、駐在員の配偶者もしくは現地の人の配偶者で長期滞在者であると推測できます。

事件現場は各フロアに防犯カメラが設置してある事から、外国人向けや高等アパートである事が伺え、このようなアパートには警備員もいたはずです。

しかし犯人は堂々と建物内に侵入しています。つまり実際に犯行を行う者にとってはカメラや警備員は関係なく、もしくは警備員もただいるだけで、その防犯効果は薄いと考えられます。

 

現在、中国内においても女性駐在員、駐在員配偶者、中国人の配偶者として中国内に滞在している日本人女性が多くいます。

実際に中国内において日本人女性が襲われるケースがあり、軽いものから殺人まで発生していて、比較的安全と言われていても、実際に事件が発生しています。

中国のマンションやアパートには警備員が常駐していますが、ご存じの通り、その職務を疑わざる負えない場面は多々あります。

 

そこでこれまで私が捜査、実務対応、相談を受けた日本人女性の事件例を挙げますので、自己防衛に努めて頂ければと思います。

 

◆強姦されそうになった日本人女子留学生。日本人男子留学生が犯人グループに逆襲事件。

上海の某大学の日本人女子留学生は大学の女子寮に住んでいました。そこに同じ大学に通う韓国人男子留学生複数人が女子寮に侵入し、日本人女子留学生に乱暴。別の女子留学生は同級生の日本人男子留学生に助けを求め、日本人男子留学生が仲間を集め、女子寮に入り、韓国人留学生と大乱闘に発展。

この時は女子留学生の同級生の救助があったため大事ににはいたりませんでした。

韓国人留学生は警察の取り調べで、日本人女子留学生から一緒に飲もうと誘われたと供述しています。

捜査の結果、実際に「誘い」はありました。

このように同級生や友人であっても、外国で外国人相手では考え方も習慣も違いますから、部屋に呼ぶ際は十分注意が必要です。

 

◆中国の某出前アプリで出前を頼んだ日本人女性。その後、配達員から嫌がらせを受ける事件

中国では出前は当たり前になっており、非常に便利なものです。更に現在のアプリでは配達員に注文者の電話番号やフルネームはわからないようになっております。それでも出前を頼むという事は部屋の場所、どのような人が注文したかはどうしても知られてしまいます。

日本人女性が夕食のために某出前アプリで注文。しかし配達予定時間になっても届かず、結局30分オーバーで冷めきった食事が到着。怒った日本人女性は配達員の評価を1にしました。

するとすぐに配達員から怒りの電話が来て、評価を取り消せと脅される。

※配達員の電話は出前アプリのセンター経由でかかるようになっております。

その後、電話でやり取りをし、評価を取り消すことになったのだが、それでも怒りが収まらない配達員が部屋までやってきて、ドア越しに怒鳴る状況に発展する。恐怖を感じた女性はSTCCの緊急電話に連絡。私から警察に連絡し、警官と共に現場に急行し、配達員を検挙するという事がありました。

出前の場合、部屋の場所が知られ、かつ注文者が日本人女性であることがわかってしまいます。

今回は評価を1にしたことからトラブルに発展しましたが、それでも部屋を知られるというのはリスクです。

対策としては不要な評価はしない。不満は我慢すると共に、玄関に男性の靴を置いたり、注文の際に箸などを2本以上にするなど、自己防衛していただければと思います。

 

◆バーで知り合った男性に部屋で強姦され、金品を盗まれる事件

日本人女性2名が上海市内のバーで中国人男性に声を掛けられ、一緒に飲むことに。

女性一人は翌朝が早いので先に帰宅。残った女性はそのまま男性と飲み続けました。

その後、男性に家まで送ってもらう。

翌朝、着衣は全て脱がされた状態で目が覚める。部屋は荒らされ財布の中の現金とiphoneが無くなっていることに気が付く。電話が盗まれた為、部屋のPCでSTCCにメール相談。私から警察に通報して女性は派出所に行き、被害届を提出。間もなく犯人が捕まりました。

対策としては、見知らぬ男性と飲むときは、自分の足で帰れる範囲内で楽しむことが大切です。また友人が先に帰る際は、やはり一緒に帰るなど、自己防衛は必要です。

またこのようなケースで日本人女性が日本人男性に声を掛けられ、酔下状態で強姦された事件も発生しています。これも同様に初めて知り合う男性とは国籍関係なく、このような事件に発展する場合もある事を念頭に置くことが重要です。

 

◆朝、子供を学校のバスの停留所に送ろうと家を出た瞬間、KTVの陪酒小姐に襲われ、子供の目の前で暴行を受けた障害事件。

早朝、駐在員妻が子供を送ろうと部屋を出た瞬間、非常階段に潜んでいた某KTVの陪酒小姐が襲い掛かり暴行を受ける事件がありました。

陪酒小姐は旦那が不倫をしていた小姐で、妻に見つかったことから別れ話に発展。その後、陪酒小姐に手切れ金を請求され揉めていました。その陪酒小姐が怒りの矛先を駐在員妻に向けた犯行でした。

その後、旦那から電話を受けた私はすぐに110番通報するように言いました。110番通報する姿を見た陪酒小姐は非常階段にある消火器で自分の足を殴り、階段を転げ落ちる。

そして到着した警官に対し陪酒小姐は「先に殴られ階段から突き落とされた」と主張。とりあえず奥様は警官と共に救急車で病院に行き、陪酒小姐はパトカーで派出所に行くことになりました。

子供はショックから派出所でもずっと泣いており、とても学校に行ける状態ではなく、その日の登校は見送りました。

実はその日の前日の深夜に旦那から私に陪酒小姐と揉めていると連絡があり、家に乗り込まれる可能性があると言われていました。

しかし深夜という事もあり、委任状も作成できなかったため、その日の深夜、部屋の入口にカメラを設置するに留めており、翌日(事件発生日)に正式に実務対応依頼を受ける形にしておりました。

派出所で陪酒小姐は「先に殴られた」と主張し、怪我をしたから賠償金20万元払えと主張。しかし前日に設置したカメラの映像が証拠となり、陪酒小姐の嘘を暴き、小姐は治安管理処罰法違反で15日拘留と奥様の治療費の賠償となりました。

相談を受けた数時間後というのは稀ですが、陪酒小姐による駐在員妻への攻撃は何度か目撃しております。陪酒小姐とお金等で揉めた場合は早めの対応をしていれば事件は防げたはずです。なにより子供が受けた心理的被害は甚大であり、家族帯同者のKTVでの遊び方を再考してもらう必要がある事件でした。

 

◆覚醒剤パーティーに参加した日本人女性の強姦事件

早朝に日本に住む日本人女性の家族からSTCCに電話があり、どうやら娘が誘拐されたらしい。どうしたらよいかと連絡がありました。事情を聞くと電話で泣きながら「誘拐され、逃げてきた。助けて」とだけ電話があり、その後、携帯電話にはつながらないという。

そこで私はとりあえず領事館に事件発生の可能性の報告をした後、逃げれている状況を考え、私のネットワークを使い、もし日本人女性を保護したら連絡をくれるように手配。

1時間後、閔行区の某派出所から連絡が来て、派出所に来てほしいと連絡を受ける。

派出所に行くと、警官に呼ばれ、女性は中国語は話せるが名前を言わない。これが誘拐なのかわからないと言う。

女性に接見すると女性は錯乱状態で、派出所が提供したペットボトルの水を頭から何度もかぶり発狂している。顔や腕には殴られた痣があり、私は警官に「薬か?」と聞くと警官は「そうだ」と言う。

私は女性に家族から来ていた名前を言うと、うなずいた。その後、事情を聞き警官に報告。

女性は知り合いに紹介された、仕事上の権力を持つ中国人の飲み会に誘われた。居住するウィークリーマンションまで車で迎えに来てもらい、そのまま閔行区内の某別荘に行った。すると地下室に案内され、部屋に入ると男女複数人が酒を飲みながら覚醒剤を吸っていた。仕事の関係上断ることができず、その覚醒剤パーティーに参加した。しばらくすると参加していた人たちはいなくなり、自分と2人の男性だけになり強姦され監禁された。早朝、トイレに行くと言って1階に上がり、トイレの窓から全裸の状態で逃げて、近くの家に助けを求め、錯乱状態の中、日本の両親に助けを求めた。携帯電話の電池はここで切れた。

逃げ込んだ家で衣服を借り、逃げ込んだ家の主が警察に連絡し保護されたのだ。

その後、本件は誘拐ではなく強姦事件として、覚醒剤パーティー主催者と犯人を逮捕。女性は家族に迎えに来てもらい帰国し、麻薬等の専門病院に入院した。

仕事上であっても、やはり見知らぬ人の車に乗ることは危険であり、中国では色々な危険ドラッグが横行しています。覚醒剤などはヤーバーやアイスと呼ばれ安価で簡単に手に入ってしまいます。

上海でもこのような事件が実際に発生しているし、今度は自分が被害者になる可能性だってある事を知って頂ければと思います。

 

◆飲用水の配達員に日本人女性が殺される、強盗殺人事件。

数年前、上海市内のマンションで日本人女性の遺体が発見されました。刑偵(公安の刑事)から依頼で私は女性の日本人の人間関係の調査を行いました。しかしながら女性の背後関係での異常はありませんでしたが、刑偵のその後の捜査で、飲用水の配達員が強盗目的で女性を襲い、抵抗されたため殺害したとのことでした。

一部、今回のバリ島の事件に似ていますが、飲用水の配達員という事は最低でも月に1回は訪問しており、生活習慣や環境なども知られてしまいます。

外国での女性の一人暮らしはどうしても危険がともないます。友人と一緒に暮らしたり、日本の下着泥棒対策のように、普段から部屋に男性が住んでいるように見せるなど、自己防衛が必要なのかもしれません。

 

他にも、不審者がインターホンを鳴らしてるから助けてほしい、中国人の旦那に暴力を受け、助けを求めてきたケースもあります。更にはKTVの陪酒小姐との問題で、中学生の女の子から「お母さんを助けて」という電話を受けたこともあります。

 

 

今回のインドネシアのバリ島でもそうですが、貧富の差が激しい地域では強盗目的や強姦目的の事件が発生しやすいものです。

バリ島も上海も他の国や地域に比べれば安全な場所ですが、決して事件がゼロではありません。

 

家族帯同での駐在員がいる会社では、駐在員妻たちに安全講習を行うなどの防衛策を行うことをお勧めします。

また一人暮らしの女性や留学生、中国人の配偶者などは、家族や友人との連携を強め、犯罪に巻き込まれないための対策を考えていただければと思います。

 

中国は外国でありながら、日本に近く、また同じ漢字文化であり、都市部には日本語表記の店や飲食店が多数あり、どうしても外国であることを忘れてしまいがちです。

今回のバリ島の事件を契機に、再度、安全に対する意識を高め、企業や家族単位で防犯に対して考えていただければと思います。