過去の裁判判例から見る、KTV小姐持ち帰りの落とし穴

●情報

 

過去の判例にこのようなものがある。刑事事件番号(2012)靖刑初字第53号なのだが、かいつまんで話すと、ネットで知り合った女性とレストランで食事し、二人で計12本のビールを飲み、女性は酔っ払う。

食事中の会話の中で、プレゼントの為に金のブレスレットを買ってあるということで、お会計後、男性は女性を家に招いた。女性も同意し男性の家に行った。

家に着くと男性は約束通りに金のブレスレットを彼女に渡し、女性はそれを受け取り、上着のポケットに入れた。

しかし酔っていた女性はその後「酔ったぁ」といい、男性の方にもたれかかり眠った。男性は性欲を抑えられず、そのまま性行為に及んだというものだ。

 

23時ごろ心配した女性の母親から電話が鳴り、女性は帰るということで、男性は女性を家まで送った。

無事に家まで送り届けた後、帰路の途中、男性の携帯電話に女性からの着信履歴があることに気が付き、女性の家のほうに戻った。

女性の家の近くまで来ると中年女性(女性の母親)と1人の男性が立っており遭遇する。

すると母親は突然「 娘はお前に薬を飲まされて強姦された」と言いだした。男性は当然「薬なんか飲ましてないし、強姦もしていない」と反論。そのまま口論になる。埒が明かないため、男性が110番通報し警官が来る。双方事情を説明し派出所にいくこととなる。

 

派出所に行くとそれぞれ事情聴取のため、別々の部屋で取調べを受ける。

 

女性の供述によるとビールを6本ほど飲んだ後、トイレに行った。トイレから戻り、再度ビールを飲むと突然意識が無くなったと供述した。意識が戻ると男性の家のリビングのソファーに裸で寝ていて、性行為があったことにはじめて気が付いたという。金のブレスレットは帰り道で受け取ったと供述した。

 

母親の供述によると帰宅した娘は顔面蒼白で髪は乱れており、何があったかを娘に聞いた。娘は供述にあるように答え、強姦されたと考えたと言う。

 

結果として男性は刑事拘留され、12日後に逮捕となり看守所(拘置所)に収監された。

 

その3ヶ月後、男性の姐が女性に対して多額の賠償金を渡し、「これ以上追求しない」という旨で和解が成立したが、これは民事的な部分の解決であって、刑事裁判は始まった。

 

(裁判のやり取りは省略)

 

裁判官の判決は薬に関しては検査で検出されず、男性の供述を認めたものの、女性は「酔ったぁ」と話しており、酔っている状況で、性行為に対する防衛能力が弱まっている状況下、同意を得ずに性行為を行うことは強姦に値する要素を満たしており、強姦罪で有罪となった。

ただし、男性は逃走も無く、警察を呼んだ際もその場に居た為、自首したと判断することができる。

(解説:この自首に関しては過去に蘇州で発生した、駐在員による小姐刺殺事件の際も、通報後に逃げていなかったため、自首扱いとなっている)

また男性側は既に賠償をしており、女性側との和解も成立しているため、減刑できる。

結果として、懲役10ヶ月の実刑となった。

 

ここで考えていただきたいのは「酔った女性が家に来ても、同意なく性交をすると強姦になってしまう」と言うことです。(中国の法解釈)

 

過去に何件か駐在員とKTV小姐の強姦騒ぎを対応したことがある。

 

そのうちの一つに某KTVの小姐を店で初めて指名した駐在員はワインを2本空け、小姐は泥酔した。

その後、家に持ち帰ったと言うものだ。

家に帰ると女性はソファーに倒れ、服を脱ぎ始めた。そして同意の下で関係を持ち、朝、小姐は普通に帰宅したという。

その1週間後、女性から「あなたとエッチしたんだから恋人でしょ。今月売り上げが足りない。今月売り上げを達成すると、店の外国旅行にいける。恋人だから助けて」と連絡が入り店に行く。

駐在員は「エッチしたんだから恋人でしょ」という言葉にSTCCに良く出ているパターンだと思い、その日は何もせずに帰宅した。

翌日も同じ連絡が入り、このままでは危険と考え誘いを拒否した。

すると小姐は「恋人だから助けるの当たり前でしょ」と怒り出したため、「恋人ではない」と返し、電話を切った。

すると女性からメールで「私は貴方に騙された。私は強姦された。賠償金100万元払え。払わないなら会社に行って上司に話し、警察に通報する 」と言い出した。

その翌日には会社に乗り込まれ、現地社員の前で「強姦された」と騒ぎ、なんとカバンから精液の入ったコンドームを取り出し「これが証拠だ」と皆に見せた。「警察に行く」と騒いだという。

使用済みコンドームはしっかり持ち帰っていたのだ。

 

そしてSTCCに相談に来ることとなった。

対応としては事前に関係機関に根回しをした後、小姐に対し「1週間も経過して何を言っているのか。どうぞ警察に行ってください。」と言う形からスタートし、もろもろやり合い、賠償金も何も無く対応は終了したが、会社に乗り込まれたこの駐在員は、部下の信用も無くなり、社内秩序維持のため帰任となった。

 

これは数件ある強姦騒ぎの一つだが、上記の裁判の判例を考えれば、もし小姐が24時間以内に「強姦された」と通報されていれば、この駐在員は刑事拘留され、実刑判決が出ていただろう。

 

北京では買春代金の金額交渉で揉めて、実際に110番通報され拘留された日本人もいる。

 

深夜の仙霞路やその周辺の日本食店で、酔ったKTV小姐を抱きかかえている駐在員や出張者を良く見かけると思う。そして酔った小姐をタクシーに乗せ闇に消えていく。こんな光景を駐在員なら何度かは見たことがあるであろう。

 

上記裁判に照らし合わせれば「女性=小姐」、「母親=チーママもしくは同僚」、「男性=駐在員」に置き換えることができる。

 

KTVでは小姐を酔わせてお触りしたり、持ち帰ろうとする情けない日本人を見かけることも多々あると思う。

もし小姐が知恵を持っていれば(実際に知恵を持った小姐の対応をしました)、強姦犯として逮捕拘留されてしまうということになる。

 

はじめから下心があり、酔わして性行為をしようと考え、小姐に大量の酒を飲ませる人は自業自得であるが、小姐が売り上げの為に酔っ払い、そのまま勢いで性関係を持ってしまえば、このようなことに巻き込まれる可能性は少なくないと言うことになる。

 

そもそも買春自体が違法であるから、どのみち自業自得ではあるが、買春で行政処分の罰金や行政拘留になるのと、強姦罪で逮捕され、刑事裁判で実刑になるのとでは、その後に日本での生活に大きな差が出るのは必須である。

 

「自分は大丈夫」とか「俺の小姐は大丈夫」とかいう根拠のない自信を持つのは自由であるが、「日本ならどうのこうの…」というのはここでは通用しない。

もし上記のようになれば、失うものは莫大であるということを心の片隅に入れて、中国での任期を無事に全うしていただきたいと思う。