商標・商号侵害店舗捜索及び調査実例

●依頼者:日本大手居酒屋チェーン店

 

●依頼内容:悪意の有無にかかわらず、中国大陸において取得している商標を使用している飲食店を全て捜索しリストアップ。

日本料理店のみならずローカルの小型店まですべてとの依頼。

 

●調査結果

 

調査方法については機密事項なため公開できませんが、中国内で依頼主が権利を持つ4つの商標を使用している飲食店について、最初に全中国一斉クロール調査を行いました。全ての捜索が終わった後は継続監視調査を行っています。

 

クロール調査の結果(データ上での調査)

 

商標A:発見侵害店9件、 商標B:発見侵害店:124件、 商標C:発見侵害店37件、 商標D:発見侵害店13件

となりました。その後、悪意を持って商標を無断使用しているかの確認の為、提供料理に応じて現場での実地調査を行いました。

 

その中で悪意を持って商標を使用している店舗、今回は居酒屋店の商標ということもあり、主に日本料理店で悪意を持って商標を使用している店舗について、更に経営情報等を調査を行いました。

 

それらを依頼主の弁護団や依頼主の知的財産権を担当している会社に情報を提供します。

 

悪意のある商標侵害店発見後の流れとしては

 

調査→警告(ここで名前を変更する店もあります)→中級人民法院に提訴→開廷→結審となります。

 

今回のケースでは

悪意のある商標侵害店:13件

 

その中で

警告により店名変更:6店舗

 

提訴:7件(内裁判中2件、 勝訴済み1件、 提訴準備中4件、 敗訴0件) 2012年5月現在
瀋陽1件、蘇州1件、嘉興1件2店舗、西安1件、大連2件、荊州1件となりました。

 

これら店舗への警告時、違法商標使用店の言い分は

 

「子供の名前をヒントに店名を決めた。」

「自分で考えた」

「日本の事など知らない。これは寝ている時に夢で見て決めた」

 

などなどですが、全てに共通する言い訳で「 この名前で工商局の営業許可が出ている」というものがあります。

 

これはどういう意味かと言いますと、中国で起業する際、設立時の一番最初に「社名を決める」というものがあります。中国では地域ごとに同名の会社の設立ができないようになっております。

また商標は中華人民共和国工商総局商標局で申請ということもあり、会社の営業許可を発行する機関と同じということもあり、このような発言が出ます。

 

つまりコピー店の主張は色々言い訳した後、最終的には「工商局が許可したのだから合法だ」というのです。

 

しかし実際は商標局と工商局がリンクしていないため、工商局では同名の会社が存在しないかのみチェックして営業許可を出しているのです。

 

中にはロゴマーク、店内内装において、日本のお店をそのままコピーしているのに「日本のお店は知らない」と言い張る者もあります。

 

これらコピー店のほとんどが、過去に日本に留学して商標所有者の店舗等でアルバイト経験をし、日本語とメニューを習得。その後、その経験を生かして中国で日本料理店を開店するのですが、その際に集客目当てで商標を不正使用しているのが実情でした。

 

実際に看板までコピーしているお店では、日本人出張者が看板を見て「日本の○○なら安心だ」と考え入店したとの日本人利用者の声がありました。

 

これらを放置しますと、コピー店で食中毒や事件が起こった場合、偽物と知らない中国人や欧米人、日本人は、本物のお店と勘違いし、著しく信用を落とす可能性があります。

 

これら偽物店は、偽物ブランドと同様に、食品、食品の安全に関する考え方、サービス等が非常に不明瞭であり、危険でもあります。

 

中国ではかつて電池やゲーム機、携帯電話、ブランド品等の物品のコピーが横行していましたが、最近ではこういうサービス業のコピーが非常に増えております。これは中国人がサービスというものを意識し始め、日本のチェーン店なら安心という考え方になってきたからです。

 

その為、今後もこのようなサービス業のコピーが増えると予想されます。

 

日本企業におかれましては、自社イメージ、自社ブランドの保護という観点からも、商標の取得というのは最低条件ではありますが、商標を取得したから安心するのではなく、自社ブランドが不正に使用されていないかの監視も重要であると考えられます。

 

[上海DMCコンサルタント]より