駐在員なら覚えておこう。ビザと居留許可証の違い

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昨今、何かと話題のビザ関連。

まもなく正式に有効な居留許可証を持っている人のビザ申請が臨時的に緩和されるのだが、どうやらビザや居留許可証の意味がよくわかっていない人が多いようだ。

 

某掲示板には「有効な居留許可証があるのになぜビザが必要なんだ」とか「Mビザで中国に入ってZビザをとる」なんていう、おかしな会話が多くある。

 

また相談でも「ノービザで入国してMビザを取得できますか?」とか「日本に帰国せずにZビザを更新できますか?」というのがある。

このような質問はSTCCのみならず、領事館でも、出入境でも困惑してしまう。

 

「何がおかしいの?」と思う方は、以下、しっかりと勉強していただければと思う。

 

これらの多くが、ビザの意味を分かっていない人たちで、且つ、中国のルールを理解していないのだ。

 

駐在員というのはその国に行き、仕事を行う人である。

駐在員にとってビザと居留許可証は基本中の基本である。

某テレビ番組ではないが「いまさら聞けない・・・」のような感じで解説します。

 

そもそもビザ(日本語:査証、中国語:签证)とは何なのか。

 

これは決して入国許可証という訳ではありません。

基本的には入国するために必要なものですが入国を許可するものではありません。

 

ビザとは「申請者のパスポート(身分)と入国理由に嘘はありませんよ」ということで、各国の領事が承認する裏書証明です。

そう、あくまでも裏書証明なのです。入国を許可しているわけではありません。ただ単に、この人は嘘を言ってませんよというだけなのです。

 

中国で言えば、その渡航理由が旅行ならLビザ、就業ならZビザ、訪問ならFビザとなり、渡航理由に嘘が無いですよと、各地の領事が裏書するのです。

だからビザは中国国外の中国外交部の領事館の領事が出すものなのです。

大使館の場合は大使館内の領事部の領事が裏書をします。

 

そしてコロナ前まであったノービザとはこの裏書を免除します。つまり「日本人は正直者ですよね。嘘つきはいないですね。信じていますよ。だから裏書はいらなくていいですよ」というものなのです。

 

つまりビザとは中国国外で取得するものなのです。

 

でも居留許可証を持っているとビザ申請ってしないですよね。

 

そこで居留許可証とは何なのかを説明します。

 

簡単に言うと「中国に滞在していてもいいですよ」というだけのものです。

滞在理由が就業であれば「中国国内企業に就業の為、指定期間、中国国内に滞在してもいいですよ」ということになります。

 

これだけのことです。

 

したがって一時帰国して再入国する際、本当ならビザ申請が必要になるのです。

しかし多くのビジネスマンが国を行き来します。毎回ビザ申請していたら大変ですよね。それに外交部も忙しくなるし、シール代等の経費もかさみます。

そこで中国は「居留許可証を持っている人は、既に中国国内で嘘等は無く滞在し、公安部がそれを認めている。しかも会社が保証人になっている。だから居留許可証を持っている人はすでに信用が証明されている。毎回ビザ申請は面倒ですよね。そこは便宜をはかってビザ申請は免除でいいですよ」となっているわけです。

 

だから居留許可証を持っている人は有効期限内であれば自由に出入国ができるわけです。

 

つまりビザとは中国国外の領事が発行する裏書。中国外交部の証書

居留許可証は中国国内での滞在を認めるもので、中国公安部が発行する証書というわけです。

 

では、先にも書いた今回の臨時緩和処置の「有効な居留許可証を持っている人はインビテーションなしでビザ申請ができる」という部分に疑問を持っている人がいるようですが、有効な居留許可証でも3月28日以降、中国は中国外にいる人のビザと居留許可証の効力を停止すると決定しています。

つまりここでいう「有効」とは「有効期限内」の事で、居留許可証自体が有効なわけではないのです。

「効力が無くなっている有効期限内の居留許可証を持っている人は、せっかく有効期限内なのに大変ですよね。居留許可証自体の効力は停止していますが、インビテーションなしで入国できるようにしましょう。だけど居留許可証は効力が停止しているので、ビザ申請免除も停止です。だから入国するために領事の裏書をもらってください。つまりビザ申請はしてください。」という意味なのです。

 

ここまででビザと居留許可証の違いはわかって頂けましたでしょうか。

 

そうなると「ノービザで入国してMビザを取得できますか?」とか「日本に帰国せずにZビザを更新できますか?」という質問の異常性に気が付くと思います。

 

ビザは入国しようとする人の身分と渡航理由が真実であるという裏書です。

この二つの質問の人はすでに中国に入国しているわけです。入国しているのにまた裏書を求めているのです。しかもビザは領事が出すもの。中国国内に中国の領事はいません。領事は中国国外の公使館に居るのです。

だからこのような相談には領事館でも出入境でも「この人は何を言っているんだろう??」となるわけです。

 

当然、事故や病気などの理由で緊急に滞在日数を延長しなければいけない場合もあります。

しかし、すでに入国しているのでビザの申請は必要ありませんし、できません。

必要なのは「中国での滞在を延期したいのですが」という滞在を許可する申請になります。

つまり「居留許可証」です。しかし就業等ではない為、臨時的な居留許可証になります。

これを中国では居留許可証「停留」という証書になります。

 

例えば任期を全うし、帰国の為の準備期間が必要な場合、すでに就業目的の滞在ではないので、居留許可証「就業」をキャンセルし、帰国準備期間のための居留許可証「停留」にするわけです。

 

旅行目的でノービザで中国に来ていたけど、事故に遭い足を骨折。医者から全治3か月と言われ、最低でも1か月は飛行機の搭乗を禁止と言われ、中国に滞在しなければいけなくなった。こういう場合でも申請するのはビザではなく、臨時の居留許可証である「停留」なのです。

 

「オーバーステイしました。日本に帰らせてください」という時も、ビザに付随する連続滞在日数がオーバーしているわけですから、ビザは失効状態です。その為、まずは今現在中国に滞在していることを許してもらわなければいけません。10日間の拘留になる場合もあります。

こういう場合でもまずは「停留」を取得し、公安部による「滞在を認めていますよ」という証書を取得しなければ出国できないのです。

 

いかがでしたか?間違って覚えていた人もいるのではないでしょうか。

よく就業での居留許可証をZビザと呼ぶ人がいますが、そういう人がいましたら「間違いですよ」と教えてあげてください。

Zビザとは就業を目的として中国に入国しようとする人の渡航理由と身分を認証した裏書です。

したがって居留許可証とは全く違うものです。

 

ビザとか居留許可とか色々ありますが、それぞれ別々の意味があります。海外のプロである駐在員として、間違えないようにしましょう。

えっ、通じるから良いって?それは違います。仲間同士では通じても、領事館や出入境などの役所では全く通じません。「何言ってるんだろうこの人??」ってなるだけです。

 

以下、間違いやすい単語のリストです。

 

・Lビザ:旅行を目的として渡航しようとする人への領事が出す裏書

・Zビザ:就業を目的として渡航しようとする人への領事が出す裏書

・Mビザ:商談や営業を目的として渡航しようとする人への領事が出す裏書

・連続滞在日数:目的を達成するためにビザに付与される連続滞在日数

・居留許可証:中国国内での滞在を許可する証書

・停留:臨時的に中国国内での滞在を許可する証書

・就業証:中国国内で就業することを認めた証書。現在は使用していない。

・工作許可通知書:中国入国前に「中国で働きたいんですけど」と申請し、働いても良いですよ。中国に来てもいいですよ。という通知書

・工作許可証:以前に申請し通知した会社で勤務してもいいですよという許可証

 

これ以外の単語は存在しません。「Z許可証」「就労証」「労働許可」なんていうものは存在しません。

万が一このような単語で役所に申請や相談すれば「はぁ?」でおしまいです。

 

これを機に正しい言葉と意味を覚えていただければと思います。

 

ちなみに最初に「ビザは入国許可ではない」と書きました。すでに学んでいただいたように、ビザは渡航理由と身分の証明書です。

入国許可は空港などのイミグレが出すものです。中国では「辺防」と言います。いわゆる国境警備隊です。ですからビザがあっても、過去に中国内で犯罪を犯していたりすれば入国許可は出ないわけです。

ちなみに入国許可証に該当するのがパスポートに押されているスタンプです。

 

いかがでしたか?勘違いしていた方も多いのでは?

まぁビザだの居留許可だのめんどくさいですよね。

それでも駐在員として、基本中の基本ですのでしっかり覚えておきましょう。

 

 

 

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