上海STCCは2009年に、当時上海でトラブル処理を単独で行っていた上海DMCグループとトラブルを経験した被害者で構想し、2010年に開設された。それ以来、上海STCCは各種トラブル、事件対応を経験し、それらを記事にしていく事で、月間総ページビュー15000以上という中国最大の日本人向けトラブル専門サイトに成長した。
サービス開始から5年を迎えた上海STCCの運営責任者で上海殿喜投資管理諮詢有限公司の塚本英樹社長に話を聞いてみた。
相談者のほとんどが「まさか自分がこうなるとは思わなかった」と言います。
中国における常識は日本とは大きく違います。日本なら全ての人が法の下に平等であり、秩序を守って生活しています。つまり社会貢献、社会順応が優先順位の上位に来ます。しかし中国ではこれらは一番最後。社会主義でありながら優先順位は「自分がいかに損せずに生きるか」ということなのです。バスでも地下鉄でも立つことが損。買い物でも人より1元でも高ければ損。結婚も人より金持ちと結婚しなければ損。つまり社会全体が損得勘定で動いています。その代名詞がお金であって、どんな手段を使ってでも金を手に入れたものが勝ち。バレなければOK。そんな拝金主義になっていったのです。その為、社会秩序は崩壊し、面子と見栄に固執してしまっているのです。
そんな中に社会秩序を守ってきた日本人が飛び込んでくるわけです。
当然トラブルに巻き込まれるのは必須です。
だからこそ、中国でビジネスを成功させるためには何よりも先に危機管理意識の向上を計る必要があるのです。しかし実際は危機管理意識は後回しにされ、現地の会計、人事、事業内容、そして夜遊びだけを学んで中国にやってくるのです。
そんな事実を目の当たりにしてSTCC構想はスタートしたのです。
トラブルは実際に被害に遭うまでは他人事なのです。
振り込め詐欺の注意書きを良く見ると思います。みんなその時はわかっていても、詐欺被害は一向に減りません。
これらの原因は他人事だからで、自分は大丈夫と無意識に考えているからです。
他人事と感じる最大の原因は「注意書き」だからなのです。
実際の事件の詳細を知ることなく、ただ注意書きだけを読むからこそ、被害者が減らないのです。
重要なのは事件の詳細で、それをリアルに感じれば感じるほど、主人公を自分に置き換えることができ、事件を実感できるのです。
STCCは事件を身近に感じるために構成するよう努めています。
実感こそが自分を守るための最強の情報であると考えています。
STCCが開設される前、事件やトラブルに関する情報は人づてに聞くしか方法がありませんでした。STCCの開設は私が上海に来てから5年後。当時は日本料理店の大将から情報を聞いたり、会社勤務であれば前任者や諸先輩から聞くしかありませんでした。
しかしこれらには大きな欠点があります。それは情報が不十分であるという事。核心部分は個人情報にも抵触するため、人から聞く話しには重要な部分が抜けている事が多いのです。しかも何が起こったかの触り部分と結末だけ。
これでは実感する事はできず、まさに他人事なのです。
さらにはインターネットの普及により、某掲示板サイトなどから情報を得る事が増えてきました。しかしこれらには信憑性が無く、聞きたくてもまともな回答が得られないという現実がありました。
現にトラブルに遭っている方など、掲示板に相談すればまともに答えてもらえる事は非常に少なく、逆に罵倒される事態になっておりました。
正確な情報がほしくても何が正しいかわからない。トラブルに遭っても相談できない。こういう状況がトラブルにあった際の初動対応の遅れや失敗につながり、大きな損失を被っていったのです。
こういう経緯を踏まえてSTCCはあえて一方通行の情報提供にしました。
トラブルに遭った際、ほとんどの方が最初は自分で何とかしようとします。例えばKTV小姐に脅迫されて財産を奪われようとしています。多くの方が日本の知識を持ち出して「これ以上やるなら法的処置をとります」なんていいます。しかしKTV小姐は「日本人の貴方に何ができるの。やれるものならやってみろ」と返ってきます。
ではこの方は何の法律を使って対処するつもりなのでしょうか。脅迫罪ですか?確かに中国の刑法にも日本の脅迫罪に当たる条文はありますが、中国ではこれはほとんど使いません。警察に言っても相手にされず「恋人同士の喧嘩は民事」と追い返されるでしょう。運が良くて警官が相手に電話で注意するだけ。これではKTV小姐の脅迫はエスカレートするだけです。
しかも中国にいる日本人の知識はテレビドラマで見た程度。そして理屈を並べて対処するのです。
これでは解決するわけがありません。日本でも微妙でしょう。
先にも述べたように、中国人は自分が生き残るために本気でぶつかってきます。こんな相手に理屈は通用しません。それに警察がコネ無しでは何もしない事は中国人は良く知っています。
個人トラブルでも法人トラブルでもそうですが、トラブルは必ず2人称以上です。重要なのはどうすれば相手が黙るかと言うこと。必死に利を得ようとする相手をどうやったら手を引かせる事ができるのか。日本のテレビドラマではそんな事を教えてくれません。
中途半端な知識は致命的です。初動のミスは大きな損失につながります。
ですからSTCCではあらゆる分野の専門家の協力を得て、相談を一括管理し専門家に割り振ることで、確実な対応を実現させました。
今後、中国の経済は悪化の一途を辿っていきます。すでに中国から多くの財産が消えています。今後中国人は自分が生き残るためにより一層必死に財を求めてくるでしょう。
日本人は何か失敗すれば自分で責任取ることを美学としています。それは日本人は日本と法令に守られているからです。更には昔長く続いた切腹文化も影響しているでしょう。しかし中国人は失敗すれば他人のせいにし、必死で自分を守ります。そうしなければ生死に関わってくるからです。それが嘘であっても関係ありません。自分に賛同する仲間を作り、自分が悪くても相手が悪いと自分を洗脳します。
こんな相手と戦うのですから、テレビドラマの知識や理屈は通用しません。
まだ被害が出ていないからこそ、専門家に相談する事が大切なのです。
そのためにSTCCは弁護士のように相談料をとることをやめ、無料で専門家のアドバイスをもらえる形に作っていったのです。
多くの方が負担無く専門家のアドバイスをもらい、トラブルを未然に防ぐ。
トラブルに遭っても迅速に解決し、経済活動に与える影響を最小限にに食い止める。
その結果、経済活動をスムーズにし、多くの日本人や日系企業が中国で成功できる。
そんな中国における日本経済を作りたいと思い、STCCを作りました。
STCCは今後も発展します。日本人や日系企業が中国における危機管理の基準としてSTCCが標準となれるように努めてまいります。
中国で本気で頑張っている日本人、日系企業のために…。
塚本 英樹
上海殿喜投資管理諮詢有限公司 法定代表人/執行董事
1977年東京都生まれ。
2003年単身上海に渡り上海DMCを起業。インターネットを使って在中日本人向けの情報配信サービスを始める。
2008年法人トラブル対応をしていた故岸田氏の指導を受けて、個人案件の対応を目的とした屋号上海DMCコンサルタント、屋号上海DMC探偵事務所を設立。
2010年トラブルに関する相談の増加と日本人詐欺師G社K氏への潜入調査から、トラブル対応の需要を見越し上海STCCを開設。
2013年これらを統括統合管理する上海殿喜投資管理諮詢有限公司を設立。法定代表人に就任。